「君のことは里美から聞いていて良く知っているし、君達の婚約を機に一緒に商売を手伝わないかと思ってさ。こういう仕事はやりがいがあるぞ。なぁに、すぐ馴れるさ。そのうち里美も加えて、更に手を広げようと目論んでいるんだ」


和樹は熱っぽく語った。


「それに・・・」


和樹は電卓をたたいて僕の目の前に掲げた。


「毎月これくらいは保証するぞ」


そこには僕のサラリーのほぼ1.5倍の額が、デジタル数字で光っていた。


和樹には継続して10年以上の黒字実績があり、そのグラフは毎年右上がりを保っていた。


彼の今後の青写真も、僕の納得のいくものだった。


里美は僕のすることには黙って従ってくれると言うし、僕の心は決まった。


「ディフェンスに回ったのに、またオフェンスに逆戻りだ。バンバン走りまくるぞ」


僕が里美に言った。


「私もマネージャーに逆戻りね」


彼女は誇らしげに笑った。


そして一週間後、待ち合わせて食事したレストランを出ると僕は言った。


「来週末、君のお母さんに僕らの結婚の報告に行こう」


里美は黙って目に涙を浮かべた。


僕は彼女を抱き締めていた。