僕らはジプニーという、派手な小型の乗り合いバスのようなもので此処に来た。
彼女は大学へも、ジプニーで通っていると言った。
「君はてっきりジョージのように、常にベンツで送り迎えされてるのかと思ったよ」
ジョージはプライベート以外は運転手つきのベンツで行動していた。
「兄は特別なの、スツェット家の次期当主だから。財産も全て兄が受け継ぐのよ」
「まるで古い日本の制度みたいだな。それで君は自立のため新聞記者になるのかい?」
「家は関係ないわ。私はどこでどう生まれても記者になりたいのよ」
「へぇー、随分かたくなだなぁ。恋人が反対しても?」
(わざと恋人なんて単語を持ち出すなんて、試してるようで情けないな)
「私は結婚なんてしないもの。叔母の様にずーっと独身でいるの」
(いいぞ!期待通りの言葉が返ってきた)
僕は嬉しさで頬がゆるむのを、どうにかして抑えるのに苦労した。
でもすぐに落胆モードになった。



