部屋の鍵を開けていると、背後のドアが開き、ものすごくチャーミングな女性が出てきた。多分ジョージの恋人だ。
結婚を望まない恋人。
僕は、こんばんは、と言った。
彼女は優しく微笑んで、軽く会釈を返してくれた。
氷入れを持っていた。
「氷ですか?」
僕はつい緊張して、バカみたいに見たまんまのことを尋ねた。
「ええ、彼が水割りをほしいと言うものですから」
美しい微笑みと共に鈴のような声が廊下に響いた。
僕は彼女がかわいそうになった。
どうして愛し合ってるのに結婚できないんだ。そんなのはおかしい。
それに、やっぱり和樹は間違っている。