「君らは、それでいいのか?」


僕は新たな怒りでやるせなかった。


「当たり前だろ、日本人はここでは金持ちだから女に対して特に横暴な奴も多い。けれどもカズはある意味誠実で金払いがいい上にいい奴だ。姉貴はカズの奥さんに離婚をせまったりなんてことはしないから、ずっとこれでいいんだ。カズは日本の奥さんに優しいだろ、どうだい?」


「・・・あぁ、浮気の一つもせずにマイホームパパを続けているらしい。俺の恋人なんか兄貴夫婦を理想としているくらいだ」


僕は正直に答えた。


「そーれ見ろ、俺の姉貴がしっかり愛人やってるから、日本では奥さん一筋でいられるんだよ」


ジョンはポンポンと僕の方を叩いた。


「そんなものかなぁ」


「そんなもんさ」


「いやっ、納得がいかないっ!俺なら里美にそんな事できないっ」


僕は首をふった。


「別にあんたにまでカズの真似しろなんて言ってないぜ。あんたは一穴主義を守ればいいじゃないか」


それもそうだ、僕は何を興奮してるんだ。


しかしなぁ、僕は日本に帰ったら、里美と由紀枝さんの顔を直視できるだろうか?


「着いたぜ。例によってここまでだ」


僕はホテルの駐車場でジョンに降ろされた。