僕らは知り合って10年、同居してから3年目になる。




大学のアメリカンフットボール部のランニングバックと、一年後輩のマネージャーからのスタートで、社会人チームに入ってからも、ケガをしてコーチに転向した時も、里美はいつも僕の傍らにいた。


靭帯損傷で杖をつきながら、それでも何とか会社へ行った日の帰り、里美は僕の身の回りの世話をするためアパートに押しかけてきた。


(控えめで大人しい彼女にしては、めずらしかったなあ)


そのまま僕らは、ケガが完治したあとも一緒の生活を続けた。


里美はうっとおしく無い程度にかいがいしく、同僚は僕を羨ましがった。


僕は心地よく亭主関白を遂行し、里美はそれに従った。


(従うってより、性分だな)


穏やかな小春日和のような愛が継続し、真夏の灼熱に焼かれるみたいな恋愛とは無縁だったが、そんなものは僕の求めるところでは無かったので現状を十分満足していた。


里美は妻にしても母親になってもほぼ完璧だと確信した僕は、勿論ほかに女性を物色するようなこともせず、時期が来たら結婚というかたちで結論を出すつもりでいた。


口の悪いかつてのチームメートは、里美以外の女に興味を示さない僕を変人扱いしたが、負け惜しみでは無く女は彼女だけでよかった。


正直に告白すると、面倒くさかっただけかも知れない。


だが、僕は思った。何も複数の女性と関係を持つ事は無い。ああいう事は誰とやってもさほど変わりなんて無いだろうし、数を自慢する気もない。


それに僕はいつまでたっても、ピュアな里美に十分満足をしていた。