「えっ?里美が?」
「うん、けがで帰国が延びるって家に電話したら、女房とお袋がやけに心配して。女房が来るって言ったんだが、子供の学校もあるし断ったんだ。それで里美におハチが回ったってわけだ」
僕の気持ちを知るわけも無く和樹は呑気に続けた。
「なんだマサヤ、婚約者がいたのか?水臭いやつだなぁ、黙っているなんて。どおりで俺とマリアのことでいい意見を出してくれた訳だ」
ジョージが話しに加わった。
「雅也君と妹の里美は、結婚こそまだしてないが、もう2年以上も夫婦同様に暮らしているんだ。付き合ってからは10年だぞ。ヘタな新婚なんぞ足元にも及ばないな」
和樹がジョージにそう説明した。
「私も会いたいわ。マサヤの選んだ人に!」
ジュディが目を輝かせて言った。
僕は、奈落の底に突き落とされそうなめまいをやっとのことでこらえて、病室の皆に愛想を振りまいていた。
ピエロになった自分が情けなかった。よく考えたら今まで話題に出なかったことこそが奇跡だ。



