フレッドは和樹の現地運転手だった。勿論運転だけでなく雑用もこなしているらしい。


ジョンは現地工場の、しいて言えば主任てとこだった。


二人は色の浅黒い典型的なフィリピーノだ。


安物の首の伸びたティーシャツを着、殆ど色の褪せた膝の破れたジーンズをはいて、ゴムゾーリをひっかけていた。


二人の服装から想像するまでも無く、トラックはみすぼらしい民家の間を壊れそうな音をたてて走り、僕にセブの現地民の貧しさを見せつけてくれた。


「大沢さん、なんか僕辛くなってきたな」


僕は和樹に言った。


「なにがぁ?」


和樹がどおって事なく言った。


「こんな生活がです。聞けば学校に行っている子供も少ないって言うじゃないですか。朝早くから暗くなる迄海に貝殻を拾らいに行って、日本円で百円も稼げばいいほうらしい。その貝殻をあなたの取引先の工場で研磨した上、繋ぎ合わせてシャンデリアにし、日本や欧米に渡るときは数万円でハケる訳だ」