「マサヤ、カズが君を連れてきてくれて本当によかったよ。それと今思ったんだが、俺は何もスツェット家の財産が欲しい訳じゃないんだ。ターミーが親族の中国人の男を婿にして跡を継ぐって手もあるだろう」
すっかり自信を取り戻した様子で言ったジョージの言葉を聞いて、僕はハンマーで頭を殴られた気分だった。
ターミーが、他の男のものになるなんて耐えられない。
僕はガクゼンとした。彼女の存在はもはや、僕の感情をコントロール出来ないほど大きく占めていた。
僕は動揺を悟られないように、ジョージに言った。
「さてと、僕はタクシーで君の家に行く。君は今すぐここにマリアを呼んで、彼女を喜ばせてやるんだ」
「すまない、恩にきるよ。俺は情けない。マリアが他の男に嫁ぐことを聞かされるまで、ズルい気持ちで彼女を引きずってきたんだからな。反省してるよ。もう彼女を離さないぞ」
ズルいのは僕だった。里美に対しても、ターミーに対しても。



