僕らは成田からマニラ経由で国内線に乗り換えてセブまで飛んだ。


僕は始終和樹の後について行動する予定となった。


セブの空港は、殺風景で、ぼくが想像していたリゾート地の空の玄関とかけ離れていた。


イミグレーションを出ると口髭を生やした若い男と、口髭の他にあご髭までおむすびの海苔のように三角にべったりとくっつけている男が、和樹を見つけて近づいてきた。


「久しぶりだなカズ!今回はどれくらいの滞在だ?」


口髭だけの男が、握手をするための手を差し出しながら言った。


「おう、お迎えご苦労!七日間だ。そのうち仕事が三日」


和樹がわざと偉そうに言った。


「リディアには何日費やせる?」


おむすびあご髭の男が腰に両手を当てて和樹に聞いた。


「そうだな、仕事と同じだけの日にちでどうだろう」


和樹があご髭の顔を伺って言った。


「それを聞いて安心したぜ。姉貴は前回のあんたの行動に頭に来てて、やたら家族に八つ当たりしてたんだ」


「あの時は急用が出来たんだ。ジョンお前こそ上手くリディアを説得してくれないと困るぜ、小遣いをはずんでるんだからな」


「急用ってのは、マニラの女に乗ることかい?」


ジョンはニヤニヤしながら、やっと右手を差し出した。


「まさかあんなところで会うとはな。お前も隅に置けないぜジョン」


和樹はその手を強く握り返して応えた。