「雅也君、パスポートの期限は大丈夫か?」


和樹が僕のもしもしの後で、いきなりそう言った。


最後の送別会で、昨夜もぐでんぐでんに酔っ払って寝ていた僕を起こすまいと、里美は兄貴に問答してくれていたが、目が覚めてしまった僕は彼女から受話器を取り上げた。


「ええ、更新したばかりですから・・・。しかし、それが何か?」


僕は首の後ろを叩きながら、相手の返事を待った。


「あさってからセブの工場に一週間行くんだけど、早速同行頼むよ。現地のスタッフにも紹介したいしね」


僕は折角だから一週間程度は里美とゆっくり過ごしたかったのだが、和樹の申し出を受けた。休暇返上の僕に里美は快く同意してくれた。


里美がパッキングしてくれたボストンバッグを手に、二日後僕は成田に向かった。



(さすが里美)