「もう、ガキじゃねーから、サンタも来ねーし。」

「あはは。」

「かーちゃんが、自分が喰いたくて、ケーキ買ってくるくらいだよ。ほら、木の形したヤツ。」

「あ〜、ブッシュドノエル?」

「それを食うくらい。」

「……明日は、部活?」

「そっ!」

「あのね、明日なんだけど…」

「クリスマス会だろ。」

「知ってたの?」

「隆志から聞いた。」

「顧問に用事があってね」

「クリスマスに用事って、意味深だよなぁ」

「ホント!ま、どうせ、体育館はバレー部の日で使えないからって…ごめんね。」

「気にすんなよ。」

「…」

「じゃあさ、キスしていい?」

「!」

近づいて来た恭一は、
私の顔を覗き込むようにして、

そっと唇を重ねてきた。

すぐに離れていく唇を追うように、
恭一の腕に掴まりながら、
私からも重ね返した。

すると恭一は驚いたのか、
持っていたプレゼントを、バサッと落し、

ふたりは離れ、ソレを拾った。

恭一が、慌てて手袋の砂をはらって見せた、その時

「きょーちゃんと一緒だったのね!」

公園の外から声が…

「お母さん!」

危機一髪だった!

「こ、今晩は!」 

恭一の声は、少し、裏返っていた。