“人の噂も七十五日”とはよく言ったもの。


私も、木村くんも
話すどころか、相手にもしないので、

気が付けば、
ヒヤかす族は居なくなっていた。



そんな初夏の夕方。

電話のベルが鳴ると、母が私を呼んだ。


「もしもし」

「あ、木村だけど」

「…は・い」

「…今更だけど、あの時は悪かったなと思って…」

「あ、あー」

「転校する前に、ちゃんと謝りたくて」

「え?」

「…ごめん」

「う、うん…」

ドキっとした。

「え、どこに?」

「福岡」

「遠いね…いつ?」

「夏休みには」

「そっか。(あれ、なんか…すこしショック?)」

「うん」

「…」

こんな時、
何て言ったら良いのか、
私は言葉がみつからなかった。

「じゃあ〜、元気で」

「(それはこっちの台詞じゃん!)そ、そっちも…元気でがんばって!」

「うん。ありがとう。」

私の胸は“キュン”となった。


電話を切ったあと、

鼓動とも違った、
心臓の位置が確認できる
この胸の痛みに、
私は、
そっと、手を添えた。