何も知らないフリをする私に、キャプテンが口を開いた。

「恩田さんの空元気な応援に“口で言うのは簡単だ”って言う子が居て…皆、焦ってたし、私も、どう対処したらいいのか…」

「やだなー!見てるだけじゃつまらないから来なかっただけだよ!だって、やりたくなっちゃって、黙ってられなく…」

「…」

「怪我したあたしが悪いんだって!でも、走ってればスカッとしてさ、また練習に顔出せる気がしてね…あ、もちろん、大会には応援に行くつもりだから!あたしだって、バスケ部なんだし…」

「…何言ってんの。当たり前でしょ!」

キャプテンの、その一言で、

「そうだよ!」

皆に、今の私の状況を、認めてもらえることが出来た。

「…ありがとう。それから、気まずくさせて、ごめんなさい。」

「どーしたの?しおらしくしちゃって、みっちゃんのキャラじゃないよ!」

「女の子は、健気で可愛らしいのが一番なの!」

「何言ってんの〜!無理しないで〜!」



私は、前に、恭一の言ったセリフが、どーしても気になって仕方なかった。

『カッコイイとタイプは別だってことだな!お互い様だよ!』



そしてついに、緊張の面持ちで陸上部へと向かった。

本多が、前もって話してくれたおかげで、
恭一以外は、あたたかく迎え入れてくれた。


まず手始めに、ウォーミングアップ的な内容をこなして、1日目の練習は終わり、
着替えて、皆の元へと下りて行くと、

すでに、恭一の姿は無かった。