ｺﾞｷｰﾗ

「我々に残された最後の希望はこの中に」
平野とｼﾞｮﾝｿﾝは売れに売れている、その不気味な液体で乾杯し、安堵の笑みを交わした。
そして不思議な事が起こり始めた。
ｺﾞｷｰﾗを飲んだ母親の産んだ赤ん坊は自力ですたすた歩いて体を洗いに行ったし、ｺﾞｷｰﾗを飲みながら休んでいたﾀｸｼｰ運転手を刺して金を取ろうとしたやつは、わき腹から包丁のえを突き出させた運転手に首根っこを押さえられて気絶し、ﾊﾞｽに鞄を忘れた叔母ちゃんは走ってﾊﾞｽに追いつき、鞄を無事取り戻した。
このような事態を受け、人類は二つに分かれた。これなら生き残れると星に残った者たち、幸か不幸かまだｺﾞｷｰﾗを飲んでおらず命からがら星を飛び出した者たち。後者は我々の祖先だろう。しかし人間は、見たことも無い物事を考え出すのには長けているが、見たことも無い過去に学ぶのは下手だ。
ｺｰﾗに好き嫌いが有るのは、あの味が懐かしさを感じさせるか恐怖を蘇らせるかの違いなのかもしれない。

end