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翌年のバレンタインデー。
放課後、ある教室でのこと。

「ねえ!冬月くんどこ!」

佐藤さんはドアをくぐり、ちょうど帰り支度をしていた槙くんの席の前で仁王立ちになるとそう言った。
槙くんは呆れたように顔をひきつらせ、佐藤さんを見上げた。

「佐藤さんてまだゆっきーの追っかけやってんの?いい加減諦めなよ。ゆっきーは彼女さんにゾッコンなんだから」
「はあ?追っかけじゃないし!てかどう考えたってあの子より私の方がいいじゃん。冬月くんもそのうち目が覚めるよ」

槙くんはため息を吐きながらゆっくりと首を横に振る。

「せいぜい頑張って」
「言われなくても。で?冬月くんはどこよ」
「ゆっきーなら学校サボって彼女さんとラブラブランデブーです☆去年の二の舞には遭いたくないからってね~」
「学校来てないの!?」

佐藤さんはぐるりと目を回し、机に巨大な袋をドン!と置いた。
槙くんはちょっとにやけながら

「ご愁傷様」

と嫌みたっぷりに言う。
佐藤さんはどっと疲れたような声で

「最悪…」

と呟いた。