バレンタインシンデレラ

「わ、私も同じような話をしようと思ってたからびっくりした」

口に出してみるといきなり嬉しさがこみ上げてきて、顔に笑みが滲んでくる。
私はにっこり笑って冬月くんを見上げた。

「私も冬月くんのことが好き」

緊張した面持ちで目をぱちくりさせていた冬月くんは、今度はびっくりした様子でとっさに手の甲で鼻の辺りを押さえた。

「マ、マジで??」

私はうんうん、と軽く２回頷く。
冬月くんは、ははと笑い、照れてるのか、うつむくとおでこを手で覆った。

「すげー、願ったり叶ったりだな…」


私もとにかく嬉しくてへへ、と笑う。
冬月くんの笑顔を見て、幸せな気持ちでいっぱいだったけど、私はすぐに気を引き締める。
言わなくちゃいけないことがあるから。

「あと、もう一つ話があって」

冬月くんは手を下ろし、優しく

「何?」

と囁く。
私は一呼吸置いて、うつむきながら言った。

「本当は私がlovefoxxxなの、違うなんて嘘ついてごめんなさい」

そう言った途端、なんとなく冬月くんが動揺しているのが伝わってきた。

「え、じゃあ何であの時違うって、」
「…私なんか絶対冬月くんと釣り合わないと思ってたから」
「釣り合わないって、どこが??」

私は渋々答える。

「私なんか際立って綺麗なわけじゃないし、目立たないし…。でも、もう気にしてないから平気。そんなことより自分の気持ちを大切にしなくちゃって気付いたんだ。それに、私これから冬月くんと並んでても恥ずかしくない人になろうって決めたの。だから、頑張るね」

私は顔を上げ、ちょっと微笑んでみせる。
冬月くんも最初は困ったような顔をしていたけど、すぐ同じように微笑み返してくれた。
そしてすっと私の髪に触れた。
それがすごく繊細そうな手つきで、かなりドキドキした。
思わず固まってしまうほど…。

「そのままで十分だから、頑張らなくていいよ。もっと可愛くなって他の男に目ぇつけられたら困る」

そう言うと冬月くんは優しく手を離した。
私はまだガチガチに緊張していて、

「あまり甘やかさないで」

と言った時も声が震えてヤバかった。
冬月くんはそれに気付いたのか、楽しそうに笑う。

「可愛い」
「………」

ハズい…。