俺にはヤマト兄と彼方のその会話の意味がまったく分からず、ただ二人のやり取りを見ているしかなかった。








「あ、遥。」









「え?」









靴を履き終えたヤマト兄が俺を呼んだ。









「言い忘れたけど、彼方の傍にいるならお前、マスクしとけよ。」









「あ、うん。わかったよ。」









「俺は食堂にいるから、何かあったらすぐに呼びに来いよ。」









「うん。」









「それじゃあ、また後でな。」









俺が『うん。』と頷いてすぐ、ヤマト兄は部屋から出ていった。









ヤマト兄っていつもは俺のことからかってくるけど、本当に優しいな…(*´ω`*)
そういう時、改めてヤマト兄の優しさが心から伝わってくるよ。









俺までなんだかしみじみと微笑んでしまった。









そして部屋の扉が小さくバタンと閉まりきると、俺は彼方の方を向く。









なぜなら先ほどのあの言葉の意味が気になったからだ。









「あ、あのさぁ、彼方。…その、ハチミツ入りって何?」








すると彼方は俺の顔を見上げて、









「…ああ。風邪を引いた時、いつも作ってくれるんだ。野菜スープとリンゴをすったやつ。…それにハチミツを入れると…。」









珍しく俺の質問に答えてくれるなと感心したその瞬間、彼方の言葉が途中で途切れる。