「はぁ…。いきなり叫ぶからビックリしたよ…でもよかった目が覚めたんだ。悪いけど、突然俺の目の前で倒れたから部屋まで運ばせてもらったよ。」








俺はとりあえず事情を話すと、ご機嫌をうかがうように笑顔を見せた。








だが、彼方は先ほどと同じように苦しそうに息をしているだけであった。
見ると、先ほど拭いたばかりの首元はもう汗の雫が浮き出ている。








「ちょ、ちょっと!彼方?本当に大丈夫?」









俺が再び声をかけて、彼方の首の汗を拭こうとタオルをあてようとした、その時。









「さ!触るな!」









俺のタオルは彼方の手によって弾かれた。









「…彼方。」









タオルが床に落ちると、部屋には静かな沈黙が訪れる。









その沈黙の中、俺は突然の彼方の行動に困惑してしまった。









何よりも目の前の彼方の様子に驚きを隠せない。









彼方は横になっていながら身体の震えを抑えるように、歯を食いしばり、自分の腕を思い切り握っている。








その身体の震えは体調が悪いというものではなかった。
…そう。何かに怯えるような、そんな震え方だった。