(貧乳処女…。あの女…。何かある前に僕の手でなんとかしなくちゃいけないな。)







彼方はそう思うと、闇底から立ち上がるように瞳を開いた。







…一方その頃。
そんな抱き合う彼方と観奈を見ていたひとつの人影が蘭藤荘の一階に現れた。







…カランッ…ガタガタッ!








そう音を立てて、洗面器とタオルなどの入浴用品が床に落ちて散らばった。








そこには物が落ちたというのに、あっけらかんとした顔をして一階から二階の彼方たちを見あげて固まる男がいた。








しばらくそのまま硬直していたが、やがて男はかけていた眼鏡のズレを直すとゆっくりと口開いた。








「…な……なぬぅ……あのクソガキ……」







男の言葉からは、こみ上げる様な怒りが感じられる。








そう、その男の正体は。







「あ、アイツ…俺の…観奈に何してんだ…。」







それは、観奈と喧嘩中の風呂上がりの圭先生だった。








圭先生はズボンのポケットから煙草を取り出し、一本の煙草に火をつけて口につけた。








煙を一度吸い込み、ゆっくり吐き出すと、下から2階に見える彼方をキッと睨んだ。







「クソッ。…覚えとけよ。」







圭先生は煙草を口でくわえながら、床にちらばった入浴セットを拾い上げ、トボトボと自分の部屋に向かい歩き始めた。完全に誤解をしたまま。







…なんだか今後、ひと波乱ありそうです。







まぁ、いろいろあった夜であったが。
これにて、次の日へと続くのであった。