俺が闇夜の中、絶望していたその頃…。







「ねー。彼方!早く食堂行こうよ〜。」








観奈が自分よりも足の遅い彼方の手をグイッと引っ張ったが、彼方の足はなぜか止まってしまった。








「彼方…?」







観奈は彼方の足が止まった理由がわからず首をかしげると、彼方がうつむきながらゆっくりと口を開く。








「…観奈、どうしよう。」







「は?急にどうしたのよ?」







彼方の突然の様子に心配そうに観奈が覗き込むと、彼方が顔を上げた。







「……。僕さ。今日で遥の事すご〜く好きになっちゃったかも…」







そう言った彼方の顔は、いまにもとろけそうだった。







「は?」







観奈が理解できないと言わんばかりに眉を寄せると、彼方が一歩踏み出し、フェンスに手を乗せて、2階から見える空を見上げた。







「だってさ…。高校3年生にしてドMで、恋愛経験0の上、あの天然記念物並みの真面目さ。…あ~~~~!もうたまんないって思っちゃった。」








もし、俺がそのこと聞いてたら今頃枕を濡らしていたんだろうな。







「…え?はるちゃん恋愛経験0だったの?意外ねぇ。」







観奈は、驚いた顔でそう言った。







「そうピッチピチの真っ白な童貞君だよ。ああ!もう僕そんな遥をますますいじめたくなっちゃった〜〜〜。」







想像の中の快感に浸りながら、彼方はフェンスから手を放しやっと足が前に進みだす。