「ああ、今度マジで頼むぜ遥!」



「う、うん。」



…とは言っても、英会話は出来ても、日本の英語の文法はよくわからない。なんて今更言えないよなぁ。



「ねえねえ、彼方君。ちょっと今いいかな?」



俺達の会話とは別に、隣近くから女子生徒の声が聞こえた。



声が聞こえた先に視線を置くと、俺のすぐ前の席、あの亜麻色の髪の男子生徒の席に、女子生徒が駆け寄ってきたのだ。



「ん?どうしたの?」



男子生徒が素早く応答をすると、女子生徒は手に持っていた数学の教科書を開いて男子生徒の机に広げた。



「うん。実は数学でわからないところがあって…」



「へぇ…。どこ?」



「うん、ここなんだけど…。」



そして、男子生徒は女子生徒に指摘された問題を丁寧に解説し始める。



すると、風間が周りに聞こえないような小さな声で呟いた。



「さすがは、彼方。容姿端麗、頭脳明晰、そして女子に人気とはつくづく尊敬するぜ。」



彼方?
ああ、俺の前の席の男子生徒の名前か。



「菅谷君は本当にすごいわよ。勉強もスポーツもこの学年でナンバー1。彼に出来ないことなんてあるのかと思うくらいの天才よ。」



風間だけでなく、愛穂までもが感心した表情で彼を見てそう言った。



へぇ…。驚いたな。
なんか初めて見た時から気になっていたけど、そんなに凄い生徒だったんだ。