「風間君!」



その時、風間が誰かに呼ばれた。



声がした方を向くと、少し長めのショートカットにふち眼鏡をかけた女子生徒が立っている。



「おー、愛穂!ちょうどいいとこに来たな!」



風間はそう言うと女子生徒に駆け寄り、いきなり女子生徒の手を引いて俺の目の前で連れてくる。



「ちょっと、何よ!いきなり!」



女子生徒は突然の事に少し嫌そうだ。



「遥、紹介するよ!こいつは、日高愛穂(マナホ)!このクラスの室長やってるんだぜ。」



「は、はぁ…」



俺もいきなり紹介されて、その場の流れに身を任すしかなかった。



「ちょっと、風間君!なんでいきなり私を紹介するのよ?」



「え?だって、今ちょうど副室長である俺の紹介が済んだ所にタイミング良く愛穂が現れたからさ。ついでに☆」



「何それ。私は別の用があって声かけたんだけどな。」



「別の用?」



「はい、これ例の署名書!」



すると愛穂と呼ばれた女子生徒は、風間の頭に束ねたプリントをドサッと乗せた。



「あー、これね。すっかり忘れてたよ」



風間は頭の上でプリントの束を受けとり、手元に持ってくると、ペラペラと軽く確認するように見る。



「ま、そういう事だからあと頼むわよ。」



「わかったぜ、いつもありがとな!」



何もわからない俺は二人のそんなやり取りをただ眺めていた。