俺がそう思った矢先だった。








「うふん。おかげさまで遠山君の寝顔たくさんフィルムに納めちゃいましたぁ☆彡」








西川さんは、制服のポケットからデジカメを取り出した。








それと同時に、俺の西川さんへのささやかな気持ちが一瞬で砕け散った。








「はぁ〜ん。もうこの遠山君の寝顔写真は、西川家の家宝にいたしますわぁ★」








西川さんは、カメラを両手で包み込むように抱きしめている。









ああ、西川さん。
もうやめてください…。








俺は、もはやそんな西川さんを白い目で見るしかない。








「はぁ、ほんと馬鹿馬鹿しいな。遥、そんな貧乳変質者はほっといて、とっとと帰るぞ!」








彼方は、ため息を落とすとさっさと廊下を歩きだした。








「ちょっと!なによ!貧乳変質者ってー!」







「あ、彼方!待ってよ!」







「そうよ!待ちなさいよ!」








俺と西川さんが彼方を呼び止めるが、彼方は俺たちを無視して歩き続けた。








ああ、俺を西川さんと二人きりにしないで!







「きぃー!信じられない!この恨み覚えてらっしゃい!」







西川さんが親指を噛み締めながら叫んだ。








なんだよ。
彼方のやつ、西川さんに会うとだいたい口喧嘩するのにな…。








「あ、遠山君!私たちも行きましょうか。と、いうより追いかけましょう!」








なんだか様子がおかしい彼方の後ろ姿が小さくなっていくと、西川さんは俺の肩を軽く叩き、廊下を小走りで進み出した。








「あ、うん。」








俺は急いで保健室から出て、扉を施錠して西川さんの後に続いた。