「ん?どうした遥。なんだか元気ないな。」







ヤマト兄が俺の顔色を伺うように覗き込んだ。







いやいやいや!
元気あるなしの問題じゃないですよ!
今の俺はいろいろ考えてしまって、とにかくどうしていいかわからない…。







俺は顔をひきつらせて、声を失った。
その時。







「え〜?そんなことないよね!遥」







隣にいた彼方がそう言って黙ってしまった俺の方に寄り添ってきた。







「いっ!(+。+)」







その瞬間、痛みが走る。
彼方が、俺の背中に隠れている手の甲をむぎゅっとつねった。







いっ!痛い!
と、俺が視線を送ると彼方は気づかれないように一瞬ギロリと睨んだ。







俺は、その瞳で悟った。
『ここで自然にしなかったら、どうなるかわかるよね?』と。







「あ、や、やだなー!ヤマト兄!俺は今日も元気だよ!」








俺は笑顔になった。
半強制的に作り出したせいいっぱいの笑顔を。







「そうか?ならいいんだけど。」







ヤマト兄は、疑いもせず安心したようだった。







「じゃあ、先生。僕たちはこれで…。」







「あ、ああ。また後でな」







俺はヤマト兄に軽く頭を下げて、彼方と共に昇校口に入った。







はぁ、なんとか助かった…。
彼方につねられた手は、軽くじんじんして痛いけどね。