「ほらっ!いつまで寝てんだ二人共、朝だぞ~っ!起きた起きた!」


焼酎の氷を入れる為に使っていたステンレスの容器を、瓶でカンカンと打ち鳴らしながら子豚とひろきを起こすシチロー。


「んもぅ~うるさいわねぇ~起きればいいんでしょ、起きれば!」


「さあ、宴会は終わりだ!これからは、本来の任務に本腰を入れていくからなっ!」


鴉信教へ潜入を試みたものの、今までこれといった成果も上がらない事に焦りを感じたシチローは、新しい作戦に転じる決意をした。


「朝唐の特別説法の時も、かおりちゃんの姿は見つけられなかった……きっと彼女はどこかの部屋に監禁されているに違いない。
今夜はこの施設の部屋を片っ端から探して回るぞ!」


鴉信教のこの広い敷地には九つの建物があり、それぞれ第一サティアン~第九サティアンと呼ばれている。


これを端から全て探索するのは、かなりの労力を必要とするに違いない。


それに……



「でもシチロー。この施設って、あちこちに見張りの信者が夜通し立っていて、探索なんてそんなに簡単には出来ないよ……」


そんなひろきの意見は、それなりに的を得ていた。