「宙に浮くんだって!
あのオジサンすごいね!」
朝唐の言葉をその通りに受け取り、大げさに驚いてみせるひろきだが
「どうせ、ワイヤーか何かで吊り上げるだけよ。ウチの劇団でもよくやるわ……」
てぃーだの言う通り、冷静に考えれば、そういう結論に辿り着くのが妥当なところだろう。
そして、実際それは事実であった。
朝唐はステージの上で合掌し、その細い目を瞑っておもむろに何やら呪文のようなものを唱え出した。
「カ~ラ~~スッタラ~ナ~~ゼ~~ナクッタラ~~」
その朝唐の足元を、息を飲んで見つめる信者達。
さすがに洗脳された信者達の頭の中には、教祖を疑うなどという思考回路は無かった。
「おお~~~っ!教祖様の体が宙に浮いたぞ~っ!」
朝唐の体は、床から5センチ程ゆっくりと浮き上がった。
「ほらっ!暗くて見えにくいけど頭の上、細いワイヤーがあるのが判るでしょ?…それに、舞台袖にクレーンの操作しているらしい人間がいるわ……」
「あっ、ホントだ……」
洗脳されていないチャリパイには、この単純なトリックがすぐに見破る事が出来たようだ。
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