デパートで会った時と同じ、相変わらずむさ苦しい髪型と髭という姿で朝唐がステージの上に立っていた。
トレードマークの真っ黒な衣装は、信者達が着ている物よりもかなり上質で金がかかっていそうだ。
朝唐を見る信者達の眼差しは、真剣そのものである。全員が朝唐のありがたい説法を聞き逃すまいと、静かに聞き耳を立てていた。
朝唐は、咳払いをひとつすると、突然こんな事を言い出した。
「皆さん!今日は皆さんに、私の『気』をお見せしましょう!」
掌を会場の信者達に見せ、そんな事を言い出す朝唐……『気』を見せるというのは一体どういう事だろう?
「皆さんもご存知のように、我々のいる地球のあらゆる物には引力という『力』が働いています。……如何なる物も、この力には抗えない、この自然の摂理。
ですが、鴉信教の厳しい修行を積めば、この絶大なる力さえもねじ伏せる事が可能である事を、今、この場で私が証明して見せましょう!」
朝唐の話を聞いていた信者達の中に、ざわめきが起こる。
「今から私は『気』によって、このステージ上で宙に浮いてご覧に入れます!」
「うおおぉぉ~~っ!
それはすごい~っ!」
朝唐の言葉に、会場全体が異常な熱気に包まれた。
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