「・・・あ」

一羽、死んでる。

「すぐ、埋めてあげなきゃ・・・。」

そう思って伸ばした手を、とっさに引っ込めた。お母さんの言葉を思い出したから・・・。
それは、以前私が、お母さんと中庭を散歩していた時の事。
そのときも、蝶が一羽死んでいた。蝶はわたしにとってなくてはならない存在。
だから、ほうっておけなくて、手を伸ばしてその死体を拾おうとした。そしたら・・・
「だめよ麻朝ちゃん!!汚いから触っちゃダメ!!」
理解できなかった。どうして、放っておけなんて言うの?
いつも優しいお母さんが、きつく私に「だめ」といったのは、それが最初で最後だった。

「(・・・お母さんに、怒られるかな・・・。)」

・・・でも、放っておくなんてできない。
そっと両手で、蝶の身体を拾い上げ、ゆっくり移動して、木下に浅い穴を掘る。
その中に静かに死体を置いて、土をかぶせると、私の頬を涙がつたった。

「(可哀相・・・)」

誰にも悲しまれず、葬式も挙げてもらえない・・・。
そしてその「死」が、誰かに何らかの影響を与える事もない。
まるで・・・

「私みたい・・・。」

口に出していっても、誰かが聞いてるはずもなく・・・

「何が?」
「え?」
「何が『私みたい』なの?」

振り向くと、私の後ろには、私と同じくらいの年の男の子がいた。