「あたしも、今すぐってのは賛成しない。事実確認と現状の把握が必要だと思う」

「俺も沙羅(サラ)と同意だ。宋が死んだとしても、今動くには危険が多すぎる」

沙羅と文吾の言葉に、いよいよ異議を申し立てる者は居なくなった。
大河は沙羅と文吾に向かって僅かに頷き、再び口を開く。

「まずは事実確認、それは文吾に任せる。沙羅は奴らの状況をちょっとでも探ってくれ」

言って二人に視線を送ると、沙羅はさっそくもたれていた壁から身体を離し、階段へと向かって行った。
文吾も同様に、「了解した」とだけ言うと、沙羅の後に続いて階段を上って行く。

「二人の報告を待って、作戦決行の是非を決める。場合によっちゃあ、行程に変更を加えなきゃいけねぇからな。オーケー?」

「……はい」

まばらに返ってくる返事に、大河は困ったように笑って頭をかいた。

皆が納得いかない気持ちは、痛いほど解るのだ。
ワ系の人間は、トウ系として身分を隠して生きている者ばかりで、今ここに居る人間の中には、ワ系と言う事が周囲に知られ、酷いいじめや迫害を受けた者も居る。
たかだか、文化が違うだけ。
それだけの違いで、とても口に出しては語れないような仕打ちを受ける。
ここは、そんな世の中を変えたくて、どうにかしたくて堪らない連中が集まっている場所だ。