茶色い髪、少し焼けた肌に、まだ乾ききっていないベビードールが所々身体に張り付いている。


少女は、イオリであった。


ハオレンはしばしその場でイオリを見つめると、足音を立てないようにゆっくりとベッドに近付いて行く。
傍らに立って、イオリの身体に優しく薄手の毛布を掛けると、顔にかかっていた髪をそっと指で流してやった。

「転んだ時に頭を打ったみたいでねぇ。ま、相当怖い思いもしたみたいだし?色んなショックで気を失ったんだんだろうね」

メガネの位置を直しながら、ユンアンはカルテから手を離してハオレンに身体を向ける。

「そんな事、聞いてねえだろ」

ニヤニヤと笑いながら言うユンアンに、ハオレンは無愛想に答える。

「そう?顔に書いてあったから教えてあげたんだけど」

ひょうひょうと答えるユンアンに、相変わらず嫌な男だ、とハオレンは眉間にシワを寄せた。

「何だってんだよ」

「いや、何でもないよ。でもまぁ、君がこの娘(こ)を連れて来た時は正直、驚いたけど」