うっすらと瞳を開けると、目の前にオレンジの球体が淡く輝いていた。

まだ意識がはっきりせず、世界がぼんやりと霞がかって見える。


ここが、天国なのだろうか。

ほのかに鼻をつく、ジャスミンの香り。

なんて、素敵な香りなのだろう。

いかにも天国らしい高貴な香りだ。

それにしても、身体が重い。

ああ、あたしは、どうなってしまったのだろう。


取り留めのない考えが浮かんでは消えていく。

イオリは、再びまどろみの奥へと落ちて行った。







「どうだ」

シャッ、と部屋を区切る薄いカーテンを開けて顔を覗かせたのは、ハオレンだった。
天井からむき出しで吊るされたオレンジの白熱球が、ゆらりと揺れた。
ハオレンが視線を投げかけた先に居るのは、白衣を着て机に向かうユンアン。

薄暗い部屋には、簡易なベッドが二台、そして薬品や医療器具のようなものがワゴンや棚に並べられている。

「意識はあるよ。薬で眠ってるからまだ起きないと思うけど」

カルテらしき白い紙に何かを書き入れながら、ユンアンは片手でひらひらと返事を返した。
二台置かれたベッドの片方には、少女が横たわって安らかな寝息をたてている。