外界を遮断するように街をぐるりと取り囲んだ塀は、外からの進入を拒むかのように高くそびえ立ち、所々には見張り小屋のような粗末なあばら家が存在している。


『外』と『街』を分断する、『ロンシャンの壁』である。


国の一角にあるにも拘らず、その街は国の干渉を許さない。

もはや街は、そこが小さな『国』であるかのような秩序が成立していた。


その街を取り仕切るのは、龍(ロン)トウキチという一人の男。

世界でも名の知れたマフィア、龍上(ロンシャン)会のボスである。


故に、その街はマフィアが取り仕切り、マフィアの秩序で成り立っている。


マフィアの秩序、それが、『外』で言うところの無秩序であるとするならば、その街に秩序というものは存在しないのかも知れない。

しかし、決められたルールはやがて守らなければならない掟となり、それが秩序と成り代わる。



だが、ロンシャンタウンに住む人々に、一体いつからこんな街が出来上がったのかなどということを考える者は少ない。

一体、いつ頃から『ロンシャンの壁』と呼ばれる囲いが出来たのかも、そうして、その壁が少しずつ、本当に少しずつ、その範囲を広げていることも。



気に留める者は少ない。