皆一様に黙り込み、ある者は怯え、ある者は半ば諦めた様子で、そしてある者は退屈そうに二階へ続く階段の先を見つめている。

明りの点いていない店の二階からは、ガシャン、とか、バタン、とかいう音と共に、時折女の高い笑い声が聞こえてきていた。


シャオファは悲痛な面持ちで、じっと階段の奥の暗闇を見つめていた。



のたうち、

苦しみ、

笑う。


まるで絶望と幸福がいっぺんに訪れたような感覚。



それが、時折起こるロンシャンの病だった。

発症した者は、数時間のたうちまわった後、何かがぷつりとはち切れたようにぱたりと死んでいく。

しかし、最後はまるで楽園でも見たかのような穏やかな微笑みを携えているのだという。


以前は発症する者もあまり居なかったのだが、ここ数年でこの気味の悪い病が猛威をふるい始めていた。

どのような感染経路をだどっているのか、何が原因なのか。

何一つ分かっていない、街のヤブ医者たちも手を焼いているこの病。

紅花でも、初めての発症者だった。


今、その病に侵され苦しんでいるのは、シャオファの姉のような存在の女だ。

赤ん坊の頃に拾われた自分を、ママと共に優しく、時に厳しく世話を焼いてくれた。

本当の姉のように思っていた、大切な存在。


それなのに。


シャオファは、ただ事が落ち着くまでじっと待つことしか出来ない自分が、歯がゆかった。