翌朝、例の男は迎えに来た。



「やあ、準備は出来たかい?」


「はい。よろしくお願いします」



父は、当然のことながら、見送りには来なかった。
私はしばらく戻ってくることの無いであろうパリの町並みを目に焼き付けて日本へ旅立った。




「冴えない顔をしているね」



飛行機に乗車して直ぐに言われた。
あえて返事をせずに、俯いた。


「あいつはああ見えて、息子想いの奴だよ。性格上、滅多に表に出さないけどね」



「あなたは父さんと、どういう関係なんです?」



「まあ、ちょっとした、ね」



それ以上は何も答えてくれなかった。
そのあとは

私がこれからやること
日本に馴染むこと



…そして彼の娘、華凛さんのことを聞いた。



いずれ私の主人となる人だと。