「あの……」
「んっ?」
「ちゃんと家に帰った方がいいんじゃ……」
戸惑ってるわたしを気に留めるでもなく、斎木くんはさっきからずっと後ろをついて来る。
また先生に捕まるって忠告するわたしに彼はさっきから笑顔のまま。
読めないその表情を訝るわたしに、
「帰るとこ無いんだ」
「えっ?」
「だから泊めて欲しいなって」
とんでもないことをサラリと言ってしまう彼に思わず唖然としてしまった。
泊めて欲しいって……さっき会ったばかりの赤の他人にこんなことを平気で言うなんて……。
改めて同業者としてさっきの先生が気の毒に思えてきた。
だってこの斎木くんは100%の問題児だから。
しかも有名進学校としてはあまり表には出したくないようなタイプの……。
「初対面の人にいきなりそれはどうかと……」
「じゃあいいよ。今日は公園で寝るから」
「えっ! 危ないからそれは辞めた方が……」
「じゃあ泊めて」
「ぅっ……」
こう言って彼はまたにっこりと笑ってみせる。
完全に斎木くんのペースで笑顔で言い込められてしまった……。
我ながら情けない。

