「……はぁ。まさかあんな場面に出くわすなんてツイテネー」
「あ……あの、ちょっと」
「また生徒指導室呼び出しかも」
「ちょっと!!」
「あ……」
斎木くんはわたしの腕を掴んだままズカズカと歩き続けながら独り言をブツクサ言ってる。
何度も呼び掛けてるのに気付かないくらいブツクサブツクサ……。
だから普段の授業でも出さないような大きな声で彼に呼び掛けた。
そこでようやくわたしの存在を思い出したらしく、
「ありがと、助かったよ」
全く悪びれた風も無く、ニッと人懐っこい笑顔を浮かべてみせる。
茶髪にピアスの派手な見た目だけでなく、彼は綺麗な華のある顔立ちをしていた。
……いろんな女の子たちにこうやって笑いかけてるのかな。
女子ウケのよさ気な顔を見てたら思わずこんなことが頭に浮かんだ。
まぁ……わたしには関係無いか。
こんな平凡一辺倒なわたしにはまるで縁の無い人種だ。
「いえ。それじゃ……」
人懐っこい笑顔に軽く会釈してそのまま帰ろうと足を進める……けど。

