窓から見える風景がどんどんアパートから離されていくことを教えていた。
威千都と最後に話した言葉はなんだっただろ……。
昨日まで肌が触れ合うくらい近くに居たのに、もう会えないんだ。
威千都の笑顔を思い出したら落ち着きかけていた涙が途端に溢れ出した。
諦めを受け入れるのは得意なはず。
なのに頭も心も威千都でいっぱいではちきれそうだった。
車がほどなくして止まったのは、大きなホテルの前だった。
その一室に通されると、秘書の男性は相変わらず淡々とした口調で説明を始めていく。
「必要なモノは一通り揃えています。今のアパートと職場を辞める手続きが完了次第、こちらで新たな住居と職場をご用意致しますので」
「いえ……自分で探します」
威千都の父親によって新しい職場と住居を用意されていたけどわたしはそれを拒んだ。

