「有川愛衣さんですね?」
放課後の学校を出たところで、わたしは見知らぬスーツ姿の男性に声をかけられた。
折り目正しくお辞儀をしてきた彼は、警戒するわたしに素早く名刺を差し出してくる。
「威千都さんのことであなたに斎木会長……威千都さんのお父様より言付けを承っております。……お時間よろしいでしょうか?」
名刺の肩書きに秘書と書かれたその男性の口から出された威千都の名前に頭が真っ白になっていく。
呆然と立ち尽くしたわたしは紳士的にエスコートされ、近くに止まっていた車へと誘われた。
わたしたちが乗るのを確認すると、運転手は静かに車を走らせる。
「これを」
そう言って威千都の父親の秘書が差し出したのは一枚の写真だった。

