あの進学校であんなに派手な見た目をしてたら嫌でも目についてしまう。
しかもお金がどうとか……教師としてはさすがに見て見ぬふりは出来ないだろう。
お気の毒サマ……先生も斎木くんも。
なんてあくまでも他人事で脇を通り抜けようとした時だった。
「姉ちゃん!」
「……えっ?」
突然大きな声がしたと思ったら、何故かこちらを向いた斎木くんがガッチリとわたしの腕を掴んでいる。
意味がわからずポカンと立ち尽くしたわたしに、
「こんな時間に一人でフラフラ歩いたりしたら危ないっていつも言ってんだろ」
「は……はぁ、ごめんなさい」
まるでホントの肉親みたいな口ぶりで言ってくるから思わず反射的に謝ってしまう。
もちろん言うまでもなくわたしたちは初対面の赤の他人だ。
しかし、
「じゃあ先生、俺姉ちゃんと帰るから」
「あっ、斎木! まだ話は」
「明日聞きまーす。そんじゃ」
先生の注意をあからさまに無視して、斎木くんはわたしの手を掴んだまま足早にこの場から離れてしまった。

