あれから駅前への回り道はやめた。 威千都と出会う前と同じ。 職場と自宅をただひたすら往復するばかりの日常がまた戻ってきた。 これが、地味で平凡なわたしには当たり前のこと。 威千都に出会ってしまったことはイレギュラー。 だから忘れてしまおう。 わたしの名前を呼ぶ威千都の甘い声も、わたしの瞳を捉えて離さなかった威千都の顔も……。 あれは全部わたしだけに向けられてるんじゃないから……。