その威千都の傍らにはピッタリと身を寄せた女性の姿がある。
年齢はわたしと変わらないくらいに見えた。
でも……圧倒的に美人で色香がある。
地味で平凡なわたしなんて霞んで消えてしまいそうな程に。
「…………っ」
あんなに捜し求めてた背中なのに。
気が付けば来た道を走りながら引き返す自分が居た。
……なんであんな期待を抱いてしまったんだろう。
威千都がわたしに笑いかけてくれるなんて……。
威千都が笑いかける相手はわたしだけじゃない。
好きになってって囁く相手だってわたしだけじゃない。
わたしだけが威千都に必要とされてるなんて……なんで思ったりしたんだろ。
自分のバカさ加減も相まって視界がぐらぐらと歪む。
5センチヒールのパンプスがこんなに走りにくいなんて知らなかった。
肺が壊れてしまったかのように呼吸が荒れる。
踵もパンプスが擦れて痛くなってきた。
静かな夕暮れの道に響いてたカツカツという音が止み、塀に手をついてその場に屈み込んだ。

