体で威千都を拒否しながら、潜在意識では彼を求めている。
残業を適当に切り上げて向かう先。
ただ真っ直ぐ帰ってた平凡な毎日が、最近では駅前に回り道するのが決まりになっていた。
急ぎ足で駅に吸い込まれていく濃紺の学ランはみんな真面目そうな顔付きをしてる。
……茶髪なんて全然見かけない。
それを目の当たりにする度に落胆する自分が歯痒かった。
自分から拒絶したのになんて女々しいんだろ……。
今更威千都に会ったってどんな顔をしたらイイのかわからない癖に。
それでもわたしを見つけた威千都がわたしに笑いかけてくれるかもしれない。
そんな期待が頭を掠めて離れない。
こんな風に思い描いていたせいだったのか。
「あっ!」
ずっと頭の片隅に居た茶髪を人波の中に見つけた。
足早にその背中を追い掛け、
「威千…………」
手を伸ばして呼ぼうとした名前が喉に詰まった。
たった数時間しか共有した時間は無いけど、見間違えるはずのない後ろ姿。
それは確かに威千都の背中だった。

