威千都の顔を下から見上げながら、わたしの心臓は緊張と恐怖心で変なリズムを刻んでる。
「一緒に寝よ?」
「な、何言って……」
「俺、愛衣ちゃんが気に入った。だから一緒に寝たい」
高校生の癖にやたらに艶っぽい顔をした威千都が、少し掠れた囁きと吐息を耳元に宿していく。
こんなに近くで他人を感じたことなんてない。
ましてや男性にこんな風に触れらることなんて……。
威千都は最初からこんな風にするつもりだったのか。
威千都のトロンと惚けた瞳が当たり前のようにゆっくりと近付いた瞬間、
「や……やめてっ!」
わたしの体は必死に顔を逸らして威千都の唇を拒絶していた。
動きの止まった気配に恐る恐るにまぶたを開けば、面食らったようにわたしを見下ろす威千都の顔が視界に飛び込む。
予想外。
まさにそんな顔だった。
そしてその顔がわたしを哀しくさせる。
わたしを愛衣ちゃんと呼んだ甘い声も、美味しいって言いながら笑った顔も……全部体を交わらせる為の伏線だったことに。

