飾り気のない部屋で唯一の自慢。
2回目のボーナスをはたいて買ったクイーンサイズのベッドが壁沿いに置かれている。
先に風呂に入るよう促した威千都が、持っていた体操服をパジャマ代わりにスヤスヤとそこで寝息を立てていた。
穏やかで安心しきった寝顔。
まるで自分の家のベッドで眠っているように遠慮がない。
半乾きの髪をタオルで拭きながら部屋の電気を消した。
ベッドの傍に置いたスタンドにスイッチを入れ、来客用の布団を押し入れから引っ張り出す。
テーブルを部屋の端に寄せ、布団を敷くスペースを確保したところで、
「そこで寝るの?」
ベッドから聞こえていた寝息は止んで、代わりにうっすら目を開けた威千都の声が聞こえた。
反射的に振り返ったわたしがそれに頷くより先に、
「……こっち来て」
「っ!!」
手首を掴まれたわたしは威千都の方へと引き寄せられていた。
驚きで全身が硬直する。
枕元のスタンドがわたしを引き寄せた張本人の愁いたような表情を映した。

