エージェント





どうしたものか。

これは絶対に何かあったのに、それを頑なに言わない。

本人のこと、それとも組のこと。



「ごめんね、急に。さ、なにか注いでくれる?」


さっきとは打って変わって、明るくいつも通りになった。

一体何だったのか。



「宝さんも甘えん坊なんですね」

「セノにだけだよ」

「本当ですか?」

「うん。…あと、今日いい」

「………っはい」



それは、夜の合図。

いつかくるとは思ってたけれど、まさか今日とは。


日付は変わるとはいえ、ほぼ1日のうちに兄弟揃ってなんて、どんな兄弟だよとつっこまずにはいられない。



一通りお酒を飲み、他愛もない話をする。

宝さんがカードで会計を済ませると、わたしも一緒に外へ出て、用意されていた車に乗り込む。


これは本城の車か。