エージェント





「甘えたいんですか?」


ーー彼はきっと甘えたいんだ。



「……そうだよ」


ちょっと照れて、頬を指でかく。

アタリらしい。



「何かお悩みですか?」

「んー。くだらない事だよ」


くだらない事で大きな組みの若頭が、こんなに悩むことはないだろう。

きっと言いたくないだけなんだと察する。



「ねぇ、セノ…」

「はい」

「キスしていい?」


彼は返答を聞く間も無く、わたしの顔わや近づけキスをした。


軽いリップ程度だったけど、これでも彼はわたしの顔色を伺う。



「ママに怒られちゃいますよ…」

「ママは俺がこの部屋で何しようと怒らないし、もしセノがこの事を周りに話し俺が被害を被ったら、セノが社会的に抹殺されてしまうから」

「……怖い脅しですね」

「脅しじゃないよ。事実だから」