エージェント





オープンから3時間。

ついにその時がやってきた。




「セノさん」


ママに呼ばれて、“ターゲット”が来店したことを知る。


相手をしていたお客様に席を外す旨を伝え、ママに着いて行く。



一番奥にあるVIPルーム。

そこは許された人しか入れない、特別な場所だと、ここに初めて来た時に教えてもらった。



「失礼します」



ほかのフロアとは違い、より静かになったこの空間。


わたしも中に入るのは初めてで、外は全面ガラス張りだったけど、中は外の様子が丸見え。

マジックミラーになっているのか。



「久しぶりに来てしまいました」

「本当に久しぶりですね、宝(たから)さん」



ソファーに腰掛け、スーツ姿でママに話しかける男性。



本城 宝。


ーー本城組の若頭。