エージェント





「何もしないんじゃなかったんですか!」

「へぇ、コウキちゃん、受け身とれるんだ」

「だからっ!」

「逃がさないよ」


そういうと、彼はこの状況になれているのか、自然な手つきでわたしの両手を頭上に上げ片手で拘束、足も動かないように自分の足を使って固定する。


こらは喧嘩慣れというよりも、女扱いに慣れてるんだろう。

力ずくで逃げ出せないわけじゃないけれど、相手が相手なだけにこの状況は困った。



「…なんでこんなことするんですか」

「俺がコウキちゃんに興味持ったから」

「なんで興味持つんですか」

「俺になびかないから」

「…………」


どんな理由だよ。

彼を取り巻く環境からしたら、彼に好意を抱かない女は珍しいだろうけれど。


だからといって、その他大勢と一緒にしてもらっては、わたしのプライドが許さない。