エージェント







組長、さっきは堕ろせって言ったよね?

今度は産んでいい?

どういうこと?




「俺も赤羽の人間、赤羽組の組長や。その立場から言えば、堕ろせっていうのがスジやし、当たり前や。

ーーでもな、光希。俺やて人の親、自分の大事な娘の子を俺は殺すことなんてできるわけないやろ」

「組長っ…」

「大事な娘と、大事な孫や。俺の大事な家族やろ」

「っ……」


大きな手で、わたしの頭を撫でてくる。


今まで一度も褒められたこともなく、わたしに対してドライな対応しかしてくれなかったのに。


ーー組長の手は、暖かい。




「お前を大事に育て過ぎたんが、悪かったな。妹尾の所に預けず、ここで育てれば良かったやろか」



妹尾が言ってたのは、この事か。

組長はわたしの存在を隠すことで、わたしに何も被害が及ばないように、遠回しにわたしを守っていたんだ。