エージェント






ーーー離れたくない。



そう思って動かずにいたけれど、バッグの中のスマホが鳴っていることに気づく。




「ーーどうやら、タイムリミットのようだな」

「っ……」



わたしから身体を離し、床に落ちている服を着る朔羅。

現実を突きつけられる。




「………さくら」

「……今なら見逃してやる」

「あっ、」



ここは、東。


きっと本城なら中でも妹尾コウキのことは知れ渡ってる。


赤羽光希ではなくとも、妹尾コウキとしてこの街では狙われる危険性がある。



「早く行け。俺が追いかけてこないうちに」

「っ……」



すぐに着替えるとバッグを持ち、朔羅に振り向く事もなく走った。


振り向いたら終わりだ。

もう後戻りできなくなる。